ショートショート



「ねー新一、男の潮吹きって知ってる?」
ベッドに横になり携帯を弄っていた新一に、快斗がなんでもない風に声をかけた。けれど、その内容は新一の興味を惹くのには十分で。
「………………は?」
お前は何を言っているんだ、と言わんばかりの表情で携帯から顔を上げた新一は、眉を顰めて快斗を見た。
「だから、男の子でもね、女の子みたいに潮吹けるんだって!しかも射精より気持ちいいんだってさ!」
「ほーそれはよかったな」
新一が興味を持ったことに機嫌を良くしたのか、快斗がニコニコと笑いながら内容に補足を加えていく。しかし新一は、快斗が説明する内容を聞き、急速に興味が失せていった。
そんな新一の様子には気付いているだろうに、全く問題なしというように新一の耳元に唇を寄せ、新一が弱い低い声で囁いた。
「だからさ、今夜試してみない?」
ブルリ、と新一の体が震えたのは殆ど条件反射のようなものだ。快斗の声が夜の行為のそれと同じだったから。

「一人でするのって腕疲れて大変みたいだし、俺がやってあげるからさ!」
マジシャンの指使いだったら絶対イけそうじゃない?と、笑いながら腰を撫で上げる不埒な手をパシリと叩き、新一は快斗を睨んだ。
「却下。俺はンなもんには興味ない。大体お前なんだよその無駄知識は」
「んーネットで調べ物してたらちょっと見つけちゃってさ」
「この変態…俺はそんなモンに興味ないからな!」
「えー…じゃあ新ちゃんがやってくれるの?」
「しねぇよ、一人でやってろ変態!」
何故そっちに思考が飛ぶんだ、と睨みつければ、快斗はウルルと目に涙を溜めてわざとらしく枕に顔を押し付け、チラリと新一を上目遣いで見上げた。
「ひどっ!新ちゃんは俺がオナニーに夢中になってエッチしなくなっても平気なの?!」
「………お前なぁ…」
「あーもーそんな可哀想なモノ見る目で見ないで〜!」
演技過剰な快斗に呆れた溜息をひとつ落とし、これ以上付き合うのもアホらしいと再び携帯に視線を戻そうとすれば、慌てて快斗が飛び起きて新一を抱きしめ、そのままの勢いで押し倒した。
「もーいいから、大人しく俺に流されちゃって」
「うわっ!」


***



両手首を頭の上で拘束され、腰の下にクッションを挟まれた。足は大きくM字型に開かされ、戻すことは許されない。
屈辱的な姿勢に何度も抵抗しようと試みたが、どんな屈強な男でも泣いて許しを請うという亀頭攻めを、マジシャンの器用な指で施され、抵抗するという意思は儚くも消え去った。
後に残ったのはただただ手の動きに連動して跳ねる体と、真っ白になった頭でひたすら快楽を追う事だけだった。


「んあぁあああああああああああ!!!!!!やぁあああああああ!!!!!!!!」
嬌声というよりも、悲鳴が新一の開きっぱなしの口から漏れる。体はグッタリと疲れているのに、快斗が手を動かすたびにビクビクと跳ね、イきたくてもイけない永遠とも思われる快楽に新一は悦がり苦しんだ。
「お…ね、がッぁああああああああああああああああ!!!らめぇえええええイかせてぇええええええええ!!!」
ベビーオイルと新一の先走りでトロトロに溶けた先端は真っ赤に充血し、今竿を触ればいつでも弾けるだろう。けれど快斗はひたすら亀頭だけを強く、素早く扱くことだけに集中し、他の部分には触ろうとはしない。
既に行為を始めて15分は経っている。それだけの時間、自分で触ることも許されず、絶頂の直前で止められ続けている新一は、気が狂いそうな強すぎる快感にただただ悲鳴を上げることしかできない。
快斗の指がリズムを変えて擦りあげるたび、耐えられないほどのもどかしさが全身を襲って、新一はボロボロと涙を流して解放を懇願した。しかし、むしろその瞬間を待ち望んでいたかのように快斗の動きは激しく、強くなって。

突然、新一は下半身が痙攣するのを感じた。と、ほぼ同時に体全身がゾクゾクと粟立ち、目の奥が真っ白になる。
「うッ…い、いやぁぁああああああああああああああああああ」
体の奥から搾り出すような悲鳴と共に、新一は勢いよく透明な液体を放ち。
この快楽が際限なく続くのではないかと思うような、ある種の恐怖を感じながら、新一はそのまま意識を手放した。


***



ふわふわと心地よい柔らかさと、切なくなるほど幸せなぬくもりを感じて、新一はぼんやりと目を開けた。
「…ぁ?」
声を出そうと思っても、喉が掠れて上手く音を出せず戸惑っていると、新一が目覚めた事に気付いたのか、横にいた快斗が新一の体を軽く抱きしめ自分のほうを向かせた。
「気付いた?おはよう」
優しい笑みを浮かべ挨拶をしてくるた快斗にコクンと頷き返し、ジェスチャーで声が出ないことを伝える。上手く伝わったのか、苦笑を返しながら快斗はごめんと謝って。
「でも病み付きになるくらい気持ちよかったろ?」
と、新一の耳元で囁いた。


甦った記憶に真っ赤になりつつも、快斗に今度やり返してやろうと心の中で誓っていたことは、新一だけの秘密である。