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ひとりあそび 後
キッドは仕事の都合である地方都市に来ていた。今回の仕事では予告上を出すことをせず、手早く確認しただけなので周囲は静かなものだ。
無事仕事を終え、取っていたホテルに向かう途中、キッドは警察に仕掛けていた盗聴器から意外な単語を拾った。
『しかし彼は噂に違わぬ推理力でしたね』
『ああ、流石工藤新一だな』
『あれで若干二十歳とは…今後が空恐ろしいです』
『ははは、ところで彼は今日は泊まる場所は…?』
『ああ、現場近くの○○ホテルに…ホテル側から用意したらしく、そこに泊まられているみたいですよ』
『事件の生臭さを広報に利用って魂胆が見えるけどな』
キッドは盗聴器の電源を切ると、予定を変更して新一が泊まっているホテルへと向かった。
一流ホテルといっても、怪盗キッドの手にかかれば進入など容易い。
あっさりとパスワードのかかった宿泊名簿から新一の部屋を探し出し、誰にも疑われること無くキッドは部屋に向かうことに成功した。
エレベーターで最上階まで一気に上がり、軽い足取りで目的の部屋の扉の前に立った。
電子キーで制御された扉はしかし、これもまたキッドの足を止めるには至らない。ポンッとどこからともなく小さな機械を取り出し何事かすると、ものの数秒でロックは外れた。
「ケケケ、あっけないねー」
悪戯っ子の笑みを浮かべながらキッドは気配を消して部屋の中に入る。
まだ遅いともいえない時間だ。恐らく新一は起きているだろう。その証拠に何か呻くような声が聞こえる。
………呻く?
キッドは眉をしかめて耳を澄ませた。
−ぅ…ぅぁ…−
やはり聞き間違いではない。小さくはあるが苦しげな声が確かに聞こえる。
意識した瞬間、キッドは声のするほうに駆け出した。
「名探偵!」
バンッと、普段の優雅さはどこへやら。扉を壊しかねない勢いで飛び込んだキッドは、目の前の光景に絶句した。
「ゃ…な、で…キッド…み、るなぁ!」
目元を赤く染め、全裸で腰を高く上げた格好の新一は、突然の侵入者に驚きつつも、身体の中から湧き上がる抗いがたい快楽に翻弄され、キッドの目の前で全身を震わせている。
「抜かな、きゃ…やぁああ!!」
新一は、後孔に深々と差し込まれたそれを抜こうと必死で身体を捩り、その刺激に再び悶えている。
予想だにしていなかった好敵手の痴態に、知らずキッドの体がぶるりと震えた。
「名…探偵…」
ゴクリと生唾を飲み込んだときには身体が動いていた。
キッドは一瞬でシャツとスラックスだけの姿になると、新一の身体を仰向けにひっくり返した。
「ひぁああああああああ!!!!」
動いたことで強い刺激が襲ったのだろう。脚を大きく開き、羞恥と快楽に悶える姿に興奮する。
新一自身は硬く立ち上がっているのに、その周囲は殆ど濡れていない。
「…名探偵…もしかしてドライでイける人?」
耳を舐めながら囁けば、面白いように新一の身体が跳ねた。
「淫乱な探偵だな」
クスリと笑えば、涙で潤んだ瞳がキッドを捕らえる。けれどその瞳は怒りのそれではなく、欲望に塗れた輝きを放っていた。
「ぁ…キッドの…ちょ、だい」
キッドの背に腕をまわし、溶けそうな口付けを交わしながら新一は自分の腰をキッドの下腹部に擦り付ける。
こんなに誘われて手を出さないはずがない。
キッドは新一の脇に転がっていたローションを手に取ると、自身にしっかりと塗りこめ、空いた手で新一を犯していたそれを一気に抜き取った。
「んァぁああァああアア!!」
「エネマグラなんて使ってるのか…相当好き物だな」
ローションと腸液に塗れて光るそれを放り投げ、ぽっかり口を開けてヒクヒクと男を誘う悪い孔へ、キッドは熱く滾る自身を挿入した。
***
「………なあ」
「…」
「おい!」
「…」
「おいコラ!起きてるんだろ、返事ぐらいしやがれ!」
焦れたキッドが剥き出しの肩に手をかけると、新一は渋々ながらキッドのほうを向いた。
しかしその眉は寄せられ、目つきは鋭いを通り越して据わっている。キッドは自分が叫ばなかったことを心の中で褒めてやった。
「今日のとは誰にも話すな」
「へ?」
「いいな、キッド…いや、黒羽快斗。もし誰かに言いやがったら…テメェを簀巻きにして宮野に差し出すからな」
確かに不法侵入をしたのはキッドだし、同意を得ずに身体の関係を持ったのも事実だ。
しかしこれはあんまりではないか。
ドスの利いた低い声で言われる内容は半ば脅迫だ。いつの間に自分の本名がとか、宮野博士に差し出されるくらいなら監獄の方がマシなのかもしれないとか、聞きたいこと、言いたいことは沢山あるけれど、キッドが言葉を挟むことは許されない雰囲気だ。
けれど。
「俺がこんなオイシイこと言うわけねえじゃん。名探偵の意外な一面を知っていいのは俺だけだろ」
ニヤリと笑ったキッドに、新一は胡散臭げな視線を向ける。
「だから、ってわけじゃねえけど、またヤラせてくんね?俺ら相性いいみてえだし?」
飛んできたローションのボトルは見事にキッドの額に当たって明後日の方向に消えてしまった。
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