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親父にアレしてるとこ見られた
両親が不在で健全な男子高校生なら誰だってすることは一緒だ。
お気に入りの動画に画像、ティッシュも万全。さっき手に入れたばかりのお宝動画はいつでも再生できるように準備してある。
家の鍵だってきちんと閉めたし、携帯はサイレントモードにして目の届かない場所で充電させておいた。
今日はなんとなく椅子に腰掛けたままやりたい気分だ。PCをベッドまで移動させるのが面倒だともいう。
椅子に浅く腰掛けズボンと下着を脱ぎ捨てると、俺はおもむろにヘッドフォンを手に取り、期待と興奮の世界へと身を投じたのだった。
画面の向こうでは可愛い女の子があられもない格好で悦がっている。初見の動画だが、なかなか自分好みで正直堪らない。
感じているのか、ビクビク反応するたび、スレンダーな身体に似つかわしくない豊満なおっぱいがぷるんぷるん揺れていて、触れないのが酷くもどかしい。ああチクショウ!掴んで揉んで、嘗め回したい!
動画に見入るうち、自然と自身を扱く手にも力が入ってきた。可愛らしい喘ぎ声が鼓膜を揺らす。いつしかまるで自分が彼女を犯しているかのような気分になってきた。
女の子が画面の向こう側で激しく突かれている。パンパンという音に合わせ俺の手の動きも女の子を突いているように動かした。
フィニッシュ目前。あと文字通り三擦り半もすれば天国に到達できると思った瞬間、
俺は剥き出しのケツに冷たい空気を感じて動きを止めた。
「あ?」
「やあ新一、オナニー中とは言え私の気配に気付かないとはお前もまだまだだな」
突然ヘッドフォンが奪われ、同時に掛けられた声に俺は硬直するしかなかった。
「親父!?なんだよ!!ちょ、信じらんね!帰ってくるなら事前に連絡しろよ!つかマジ出てけって!!」
「はっはっは。混乱しているな。探偵はどんな時も冷静さを失わないことが大切だぞ」
俺から奪ったヘッドフォンをクルクル回しながら親父は嫌な笑みを浮かべている。俺は苛々しながらブラウザを閉じた。
「いいから出てけって!!」
「まあそうカッカするな。とりあえず下着ぐらいは付けなさい。驚いて元気をなくした息子が寒そうだ」
信じられないデリカシーのなさだ。
床に放っていた下着を拾って寄越してくるなんて!
渡された下着を奪い取って睨みつけると親父は肩を竦め、笑いながら部屋を出て行った。
フィニッシュ直前でいけなかった息子を持て余しつつ、なんとも言えない気持ちでパンツ履かなきゃならんかった俺の気持ち、誰かわかってくれよ!
結局、親父は締め切りから逃亡してきただけのようだったので、ささやかな仕返しとばかりに出版社と、母さんに電話しておいた。
それでもムカッ腹が収まりそうになかったから、ついでに母さんがコッチに置いてる化粧道具の中から口紅を取り出して親父のトランク漁って、色の淡い下着の数箇所にキスマークっぽくペイントしておいた。ざまあみろ。
あとはデリヘルのチラシを数枚コートのポケットに忍ばせておいたり、トイレ行ってる隙に携帯に風俗の番号入れといたり。
まあ俺が親父にされたことから考えたらささやか過ぎる仕返しをしてやった。
しかし仕返しをしたことと、フィニッシュできなかったこととはベクトルが違うのも事実なのだ。
だからと言ってこの家で今日、再びオナニーするのは躊躇われる。
ということで、俺は恋人の家に押しかけることにした。
「おい快斗。やろーぜ」
寝込みを襲うのは基本中の基本。安らかに眠っている恋人の腹の上に座って耳元で囁けば、いつから気付いていたのか恋人が疲れたように目を開けた。
「あの新一君、夜這いまでする気概は大変好ましいですが、俺、明日の朝一番に大仕事…」
「何?オメー俺とやりたくねえの?」
小首を傾けて快斗の首筋を指先で辿ってやる。
「いや、やりたいです」
思ったとおり即答しやがった。ちょろいな。
「ならやろーぜ?俺、今なら多分なんでもできるぜ?」
「はあ…この我が侭女王様め」
とかなんとか言いながらやる気満々じゃねえか、ケツに当たってんぞ、戦闘態勢ばっちりなオメーの息子。
気持ちよく溜まってたモンを発散させた後、俺たちは簡単にスエットの下だけを履いた状態でくっついていた。ベッドが狭いのは今更で、快斗を下敷きにして俺は快斗の身体の上に抱きつくようにして寝そべっていた。俺の腰に快斗の両腕が巻き付いて支えてるし、俺は両膝で体重を分散させてるし、結構この姿勢収まりがよかったりする。
「つか、元はと言えば、オメーが今日できねえなんて言うから親父に見られる羽目になったんだよなあ」
「もしもし新一さん?話が見えねえんだけど?」
思い出したように家での出来事を呟けば、何も知らない快斗が呆けた顔で尋ねてきた。いいこと思いついた。コイツのこのアホ面、驚愕で歪めてやろ。
「…オメーのせいで、俺、親父にオナニー見られた」
「!?新一のちんこ見ていいのは俺だけだろ!いくらお義父さんと言えども許せねえな。今度新一を嫁にしますって予告状出しとくか」
案の定快斗は驚きに目を見開き、ただしそこからの流れが俺の予想と異なった。大体オメーが怪盗やってるのはトップシークレットじゃねえのかよ。キッドが俺嫁にしたら、快斗はどうすんだ。
「キメえこと言ってんじゃねえよ」
「いやいや俺は本気だぜ?」
「尚のこと悪いわ。まあいい…親父が帰った後にリビング見たら、オ○エ○ト工業のカタログが置いてあった」
「うわあ…コメントし辛れぇ…」
俺はマニアックなリアルラブドールの企業まで知ってるオメーにコメントし辛れえよ。
「いっそ親父のカードで注文するか?」
「新一いるのにラブドールに興味はねえなあ」
「ほう、中々いい心がけだ」
「「!?」」
突然掛けられた第三者の声に俺たちは驚愕した。ベッドから転げ落ちなかったのが奇跡だ。
「親父!?帰ったんじゃねえのかよ!つかどうやって入った!!」
先に恐慌状態が解けたのは俺の方が早かった。つか俺はともかく快斗にまで気付かれずにここまで来れる親父って何モンだよ。
「はっはっは。快斗君の母上とは昔馴染みでね。やあ快斗君久しぶりだね。と言ってもキミは覚えていないかな?新一の父の工藤優作だ」
親父が手を差し出すと、快斗もおずおずと片手を差し出した。
「え、あっ…こんな姿勢ですいません。黒羽快斗です」
ほんとにこんな格好だ。俺は快斗の上に跨った状態で寝転んでるし、快斗は俺に下敷きにされて身動き取れねえし。
「快斗!挨拶なんかしなくていい!」
「え、だってお義父さんだし…」
困ったように快斗が言った瞬間、親父の雰囲気がガラッと変わった。
「ふうむ。私の息子は一人だったはずだが?」
親父はにこやかに笑っているはずなのに空気がピリピリしているし、快斗は快斗で思いっきり俺の腰を抱きしめて牽制している。
つか親父、何がしたい。さっさと帰れって。苛々しながら携帯のリダイヤルから目的の番号を呼び出した。
「…もしもし、夜分遅くに申し訳ありません。工藤新一です。ええ、ご苦労様です。今見つけて捕まえてますので、はい。はい。お待ちしております」
通話を終えた時には既に親父の姿はなく、快斗が苦笑いしているだけだった。
嵐が去った後、俺たちは電気を消した部屋の中で抱き合っていた。
「新一は愛されてるなあ」
「愛が重い」
「ははは、息子が心配なんだって」
「心配なら心配だって言えばいいだろ。つか、オメーも懐柔されてんじゃねえよ」
プイと顔を背けると、快斗が慌てて何か言ってきた。けどもう眠い。今日は色々あって疲れてるんだ。
煩い口をキスで塞ぎ、俺はそのまま意識を手放した。
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