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esidarap
体が重い
重くて重くて、熱くて重くて
苦しい
新一は不快な感覚にうっすらと目を開けた。
そっと枕もとの携帯を確認すれば、まだ夜中の3時で、眠ってから数時間が経過していることを知った。
ぼんやりとする頭で、体の感覚に意識を向ければ、寝起きなのに心拍数が異常なほど高く。そういえば体がやけに熱い気がする。
まとわり付くような汗と意識した途端襲ってきた不快感に眉を顰め、新一はそっとベッドから抜け出そうとし、それはあえなく失敗に終わった。
「ッ!?」
立った瞬間に真っ暗なはずの世界が真っ白に変わり、次の瞬間にはベッドの上に倒れこんだ自分を意識する。
こんな時は無理に動くことはない。熱を測るのと、服薬は後からでもできる。朝一番に隣の主治医に連絡を入れることを決め、新一はゆっくりと布団の中にもぐりこんだ。
けれど、一旦覚めてしまった眠りは襲ってこず、変わりに具合の悪さばかりが襲ってきて。
新一は目が覚めてから30分、眠れずにいた。
Pure? What does it mean?
The tongues of hell
Are dull, dull as the triple
突如頭の中に浮かんだフレーズ。
『Fever 103°』
それはいつだったかパラパラとめくって、わからないと首を捻った、とある詩だった。
それがストンと自分の中に落ちてくる。
「うわ…こんな時に思い出したくはないのに…」
自嘲のように呟けば、喉の奥が焼けるように熱く、痛い事に気が付いた。
From me like Isadora's scarves, I'm in a fright
One scarf will catch and anchor in the wheel.
こんな時に思い出したくもないのに。喉が絞まって苦しんでいる情景なんて。
嫌だ。嫌だ。嫌だ。助けて快斗。
新一はほとんど無意識に携帯を手に取り、着信履歴から快斗へと電話をかけていた。
プルルルル プルルルル …
『…もしもし…?新一?』
遠くで聞こえる快斗の声に、新一は安心したのかそのまま眠りへと落ちていった。
Darling, all night
I have been flickering, off, on, off, on.
The sheets grow heavy as a letcher's kiss.
熱にうなされ、体は汗にまみれ。それはどこか性行為にも似ている。
「ぅ…」
小さく呻いて目覚めれば、
「あ、起きた?新一具合の方は大丈夫…?」
快斗が心配そうに新一を覗きこんでいた。
「………?」
喉の奥の熱に喋ることが叶わず、新一は目線で何故と訴える。
「あーやっぱり覚えてなかったんだ。電話繋がりっぱなしだったもんね。」
水を渡しながら苦笑し、快斗は事のあらましを説明していく。
曰く、普段の新一からは想像もできない深夜の電話に驚きつつも出てみれば、穏やかとはいいがたい呼吸音だけが聞こえ、しかも時々咳き込むような声まで聞こえ。これは何かあったに違いないと慌てて工藤家に向かったという事だった。
新一が申し訳なさそうに眉を寄せると、快斗はニコリと微笑んで、
「いいんだよ?新一が無意識に俺に助けを求めたことが幸せだから」
その言葉に安心し、新一は目覚める直前に浮かんだフレーズを思い出した。
けれど、その体はこざっぱりとしていて。よく見ればシーツも取り替えてあるようだ。
再度快斗に済まなさそうに笑いかければ、快斗は再び苦笑して。
「哀ちゃんもうすぐ来るみたいだから、病人は大人しく寝ときなさい」
新一が苦しくない程度に布団を掛けなおした。
***
後日。熱もすっかり下がり、新一は甘えるように快斗に擦り寄っていた。
快斗の足の間に納まり二人で見ているのは、ある詩集。
「熱が出た時にさ、この詩が頭の中ちらついて大変だったぜ」
新一は苦笑しながらその詩を目で追った。
「シルビア・プラスねぇ…新一が知ってたとはちょっと意外かも」
「んー…俺も何で読んだかは覚えてないんだけどな、しっかし熱が出た時にこんな事考えてたら絶対早死にするよな。」
「……まぁ、うん、あながち間違っちゃいないと思うけど…それより新一は熱にうなされてる時にこんなセクシャルなこと考えてたんだ?」
ニヤリと笑いながら快斗は新一の脇腹辺りを撫で上げる。
「は?いやいやいや。この詩は高熱の時の描写だろ?」
「そうだけど、解釈の仕方なんて色々だしね。俺はこれにどこか性の匂いを感じるけど?」
言いながら快斗は新一の耳や首元に唇を落としていく。
「何でお前興奮してんだよ!」
ワタワタと暴れる新一の顎を捉えて、
「もう黙って…?」
唇を重ねた。
Not him, nor him
(My selves dissolving, old whore petticoats)
To Paradise.
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