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MUSIC HOUR
新学期でもないというのに、突然教師が変わった。
いや、突然というにはいささか語弊がある。今まで担任だった教師が二人目出産のため育児休暇に入り、そのため後任がやってきたというだけだから。
ちなみに育児休暇に入った担任は、笑顔の優しい、しかしながら厳しさを持ち合わせた、グレイシア・ヒューズという女性だった。
母のような優しさと、笑顔を持ったヒューズは男女問わず人気教師だった。
そのため、後任が黒目黒髪の随分厳しそうな男だと情報が入ったとき、皆が一様にがっかりした。
が、それはただの杞憂に過ぎなかったと、このクラスの人間は思ったはずだ。否、思っている。
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「あー、こちらが育児休暇に入られたヒューズ先生の後任になられた、ロイ・マスタング先生だ。マスタング先生はこの学校について余り詳しくはないのだから、このクラス一丸となってサポートするように。」
校長、キング・ブラッドレイはそう言って教室内で新任教師を紹介すると、そのまま教室を出て行った。
残されたのは俺たちと、新任教師。
既にクラスの女子の目は新任教師から離れなくなったらしい。
ロイ・マスタングが校長に続いて教室の戸をくぐった時の異様な雰囲気を俺は忘れないだろう。
にこやかに入ってきた黒髪黒目の男を視覚に捕らえた瞬間、誰しも固まったのだから。
彼を何と表現すればいいのだろうか。恰好いいとか、綺麗とか、そんな陳腐な言葉で表すには限界がある。そんなのじゃなくて、もっと。もっとー…。
「私が、ヒューズ先生の後任となったマスタングだ。担当科目は数学。限られた時間ではあるが、よろしく。」
マスタングはにこやかに自己紹介をし、そして。
「このクラスの委員長は?出来ればこのクラスの紹介を委員長に代表してやって貰いたいのだが。」
ぐるりと教室を見渡す。誰も委員長を名乗らない。というか、名指すことも出来ない。動けない。彼の一挙手一投足が洗練されすぎていて。おかしいな、食べられるわけでもないのに、クラスの中の奴ら全員、俺も含めて蛇に睨まれた蛙状態だ。
そんな事を考えている間にも、マスタングは一人ひとりを確かめるように見て。そして、目が、合った。
「そこの金髪の君、委員長は誰か教えてくれないか?」
「ッ!!!!」
体が、跳ねる。ガタン、と大げさな音を立てて俺の机が動いた。
金髪なんてこのクラスには俺しかいない。目が合っただけなら気付かない振りだって出来たのに。
「おや、君は…目も金なんだね…。はははそんなに緊張しないでくれ。で、委員長は?」
見開かれた俺の目を見て、マスタングは楽しそうに話しかける。何がそんなに楽しいんだ。こっちはわけのわからない魔法にでも掛かったみたいなのに。
「い…委員長は……。」
「続けて。」
マスタングの目が声が。
「お、れ…です…。」
喉から絞り出すようにして声を出した。普段の俺を知ってる奴なら爆笑しそうな情けない声。けれど、誰一人俺の声に笑うことなく。ただ成り行きを見守っている。本当にこのクラス全部が変な魔法に掛かったみたいだ。
「そうか…私は運がいいらしいな。たまたま指名した生徒が委員長だったわけか。では委員長、君の名前は?」
蛇に睨まれた蛙は、ただ言葉に従うことしか出来ない。
「え、エドワード・エルリック…で、す。」
にこやかに笑っている黒目の奥から目を離すことも出来ない。
「エドワード…エドワード…。」
目の前の教師は何か考えるように目を伏せ、俺の名前を連呼していた。そして、次に顔を上げたとき、このクラスの緊張の糸は一瞬にして切れた。
「きみ!!!まさかあのエドワード・エルリックか!?」
目を見開き、何か途方も無い喜びを湛えた声で、マスタングは声を上げた。
「ッ?!」
あのエドワードか?何て言われたところで、どのエドワードか…わからないと言い切れたらいいのに…。
「世界的有名ロック・スターのヴァン・ホーエンハイム!彼の息子の一人にエドワードという金髪金目の子どもがいるんだ!しかも年頃は君と同じ15歳!父親が有名すぎて母親のエルリック姓を名乗っているというのは本当だったのだな!!!」
マスタングは呆気に取られるエドワードを差し置き、一人で言葉を並べていく。自身の言葉をエドワードに確認を取るわけでもなく、むしろ、自分の情報を自分で確認している。
確かに俺はロック歌手のヴァン・ホーエンハイムの息子、エドワード・エルリックだ。なぜホーエンハイム姓を名乗らないのかは先ほど、新任教師が説明した通り。
けれど、あえてそこに付け加えるなら、俺は父親が大ッ嫌いってのも含まれてるけどな。
「あー何てことだ!!俺の音楽の神の息子が教え子だなんて!!!グレイシアに感謝しなければ…!!!!よし今夜はお見舞いに…!」
…現れた新任教師はどうやら相当なロック馬鹿だったようだ。
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私にしてはかなり異色な鋼パロです。
初めてのちゃんとした形での鋼がパロって…。しかもうっかり学園モノ…。
タイトルがアレなのは…ちゃんと続けられたら判明するかと。。。
続くといいな。頑張れるかな。
とりあえず後編は既に書ききってるので、タグ打ちが面倒でなければすぐにアップします。
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