喪の作業



「あいつは…辛いことが沢山あったのに、バカみたいに笑うんだ。誰よりも傷ついて、何度だって死にかけて、それでも笑うんだよ。」
満月に盃を手向ける。
兄弟のことを誰よりも知っていて何もできなかった自分。新聞で知ったエースの死。狙われたルフィを守るために命を失ったなんて、いつかの火事のときみたいだ。ルフィを守るために自分が命を失うなんて。けれどそうやって守られた方はどうすればいいのだろう。目の前で自分を守るために死にゆくなんて。
新聞の記事を読んだだけで、エースの気持ちも、ルフィの気持ちも痛いほどにわかってしまって、涙が止まらなかった。
「あたしゃ乗り越えろなんて言えないよ。じっと立ち止まって休んだっていいんだ。世間が何と言おうとあたしはアイツの味方だ。辛かったらここに帰ってくればいい。」
ルフィとエースの国という名の掘立小屋はまだ残してある。いつあの兄弟が帰ってきてもいいように時々掃除だってしていたのに。
「なのに…あの子は乗り越えるんだろうね。まるで乗り越えなきゃ死んじまうとでも思ってんのかね。」
「ダダンお前…。」
何か言おうとしたガープの盃に酒を継ぎ足すことで言葉を止める。自分に対する慰めの言葉なんて求めていない。今一番つらいのはルフィなのだから。
「ガープさん、歳をとるってのは嫌だね。あたしゃすっかりあの子たちの母親気分だよ。」
山賊でも親になれるんだねぇと笑ったダダンは、すぐに表情を曇らせてぽつりと呟いた。
「親を遺して先に逝く子があるかい。」
大きく息を吐くと、盃に残った酒を一気に喉に流し込み、ガープに向き直った。
「ガープさん、話してくれないかい?エースの最期を。ルフィの行動を。海軍の人間としてではなく、あの子たちの祖父としての言葉で教えてくれないかい?」
どこから話そうか、ガープはゆっくりと首を縦に振ると悲しい記憶を辿っていった。