First Impression



ルフィはその身体のどこに入るのかと思うほどよく食べるやつだ。
孫たちの出会い記念だとか何とか適当なことを理由に用意された、少し豪華な夕飯はあっという間にルフィの胃の中に消えてしまった。
兄弟がそれまでいなかったエースにとって、食べ物争奪戦は経験のないことだったため、気がつくと消えていた夕飯にただ愕然とするばかりである。
「なんだエース食べないのか?」
「食う!こらっ!俺の分取るな!」
「だってエース残してンじゃねェか」
「あほか!オメーの食いっぷりに呆れてるだけだっつーの」
ちゃっかり自分の分のいくばくかの料理と、大量の酒をキープしたガープは豪快に笑いながら、楽しそうに笑っている。
「くっそ。ジジイ、俺にもビールくれ」
「冷蔵庫にいくらでもあるわい。ついでにつまみも持ってこい」
「さんきゅ」
冷蔵庫を漁っていると、いつの間にかルフィが後ろに立っていた。せめてつまみだけは死守しようとエースは身構えたがしかし、予想に反してルフィはエースの持つビールの缶に注目していた。
「ずりィぞ!俺もビール飲む!」
「あほか未成年。オメーにゃはええよ。これで我慢しとけ」
笑いながらコーラを渡すと、ぶつぶつ言いながらも嬉しそうに受け取っている。既にビールなどどうでもいいようだ。
食い意地が張っていて、単純。エースはしっかりと頭の中にメモしたのだった。


ビールから焼酎へと変わったころ、ガープが言いにくそうに口を開いた。
「ところでエース、お前の部屋なんじゃが…」
「ん?」
なんとなく嫌な予感を抱きつつ、ガープの言葉を待っていると、何故かルフィが言葉を継いだ。
「俺がもらったぞ!しししっ」
「…あーやっぱりな」
この家にはエースの部屋にしかエアコンが付いていない。エースは中学を卒業したと同時に一人暮らしを始めたため、折角の設備も殆ど使われることがなかった。
ルフィをその部屋に宛がうのは当然と言えば当然の話で。
「じゃあ俺は下で寝るよ」
ここは古い家のため、窓を開けて扇風機をつければ、それなりに過ごすことができる。エースが苦笑しながら言うと、ルフィはなぜか盛大に顔をしかめた。
「駄目だ!エースは俺と一緒に寝るんだ!俺の兄ちゃんだからな!」
「は?」
「俺、兄弟とかいなかったから、兄弟っぽいことしてーんだよ。…だめか?」
しおらしく上目遣いに言われると、無下に断ることがなんとなく躊躇われる。エースは大きなため息をつくと、コップの中の液体を飲みほした。



久しぶりに入る自室は、中学から時が止まっていた。無造作に壁に貼ってある色褪せた仲間たちとの写真や、古いCDが時間の流れを物語っている。
そんな中にルフィの私物が乱雑に置かれたりしていて、懐かしさと目新しさが混在する不思議な空間になっていた。
「好きに使えばよかったのに」
自分が置いていった教科書や参考書類がそのまま残った机を指しながら言うと、ルフィは緩く首を振った。
「ここはエースの部屋だからな。俺はエースの許可なしにいじれねえよ」
「律儀な奴」
あっさりとエースの懐に入ってきたかと思えば、一定の線を引いている。初対面の兄に、一緒に寝ようと言うくせに、部屋の荷物には触れない。不思議なヤツだとエースは思った。