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DVD
「…何これ。」
帰宅し、鞄を開けると見慣れないDVDが入っていた。パッケージはない。こんなもの誰が入れたのだろうと考えてみるも、そんなことをしそうな者は一名しか思い当らなかった。
「リボーンのやつ。今度は何をたくらんでやがるんだよ。」
丁度家には誰もいなかった。職員会議だか何だかで学校が急に昼で終わったのだ。
奈々は居候者たちを連れて、恐らく買い物にでも行っているのだろう。
得体の知れないものを再生するには都合がいいと、綱吉は特に何の疑問も抱かずそれをデッキに入れた。
妙に安っぽいセットと棒読みの知らない女優が、画面の向こう側で微妙な演技を繰り広げている。やけに丈の短いスーツを着こんだ女優演じる女性記者が、企業の不正を暴くべく潜入捜査を行うと言うストーリーのようだ。
「変なの。こんなドラマ見たことないんだけど。ボンゴレ作成なのかな?」
ジュースを飲みながら首をかしげていた綱吉は、次の瞬間そのジュースを思い切り噴き出すことになった。
「な、な、な!!」
一体何が起こったと言うのか、数秒前まで普通だったはずの女優の服は、思い切り肌蹴ていた。確か進入に気付いた企業側に捕まり、怪しげな薬をかがされ意識がなくなるという手に汗握るシーンだったはずだ。それが次の瞬間には女優の服は下着とかろうじてブラウスが引っかかっているだけになり、実験台のようなところに寝かされてというよりも、繋がれていたのだ。
「まさか…これって…。」
綱吉がその可能性に思い至った頃には、女優の豊満な乳房が画面いっぱいに広がり、それを思い切り揉みしだかれていた。
『あっン…やッ…そこはッ!』
不自然なほどに映らない男優、悩ましげな女優の表情と、先ほどのストーリー展開とは殆ど関係のない程にねっとりとした愛撫。
「これって、これってえ!!!!」
『あん、ふァん…!気持ちいいッ!』
いわゆるアダルトビデオという代物だと綱吉が気付いた時には、女優が口いっぱいに男優のブツを頬張っていた。
消そうと慌ててリモコンを探すも、先の展開が気になってしょうがない。綱吉はアダルトビデオはもちろん、エロ本だってこれまで見たことがなかった。けれど綱吉は健全な男子中学生だ。性的なものに興味がない筈がない。いつの間にかリモコンを探すのも忘れ、画面に見入ってしまっていた。
画面に広がる肢体に扇情的な視線。潤んだ大きな瞳は快楽にとけている。
『んっんっ…ふぁッ!』
「ッ…ァ…!」
女優が男の局部をまさぐる手の動きに合わせて、綱吉も張り詰めた自身を握りしめ動かしていく。
何も考えることはできなかった。まだ制服だとか、いつ家族が帰ってくるかわからないとか、そんなことはどうでもよくて、ただただ身体に溜まった熱を放出したい。その一心でただ只管に自身を高めていく。
ゾクゾクと肌を駆け巡る快感に手を止めることができない。普段自分で行っているそれとは比べ物にならない程に深い快楽が綱吉を襲う。画面のそれに従うよう先端に手を滑らせれば、目の前がチカチカとスパークした。
ぬるぬると零れる先走りを塗りこめ、普段はあまり触らない先端部分を集中的に責めていく。
「あっ!あっ…!」
あまりにも強い快楽は最早快楽とは呼べない。思わず恐怖するような強すぎる感覚に手の動きを止めたいのに、自分の意志では止めることができず、綱吉はただただ自身を責め上げることしかできなかった。
付きっぱなしの画面からはいつの間にかパンパンと肌を叩く音が流れていて、クライマックスに向けその音が加速していくようだ。それに合わせ綱吉の手の動きも早まった。
「随分面白そうなことやってんじゃねえか。」
「ッ!?」
もうほんの少し擦れば達せるという時、突然かけられた声に綱吉の動きはピタリと止まった。
「リ、リボーン…。」
「ちゃおっすツナ。」
下半身の一部を晒しそこを握りしめるという、何とも無様な姿でリボーンを迎えてしまった綱吉は、ただただ固まることしかできない。
「えっとこれは…。」
誤魔化そうにも、しっかりと流れっぱなしの画面からは甘すぎるほどの喘ぎ声が聞こえていて、何をしていたかなんて一目瞭然すぎる。嫌な汗が背中を伝っていくのを感じ、綱吉はゴクリと唾を飲み込んだ。
「フン。いいのかツナ、お前もう少しでイけるんじゃねえのか。」
「えっ!も、もういいよ…てゆかお前もちょっとは遠慮しろよ!」
突然の指摘に慌ててそこから手を離すと、綱吉は急いで下着を引っ張り上げた。先走りで湿気たそれを拭かずに下着に詰め込むことに多少の不快感を感じるが、正直なところ今はそれどころではないのだ。
「うるせーぞダメツナ。オナニーに夢中になって俺の気配に気付かないとはどういうことだ。」
「普通気付かないよ!もー、お願いだから出てってば。」
真っ赤な顔で怒鳴りながら懇願するも、リボーン相手には全く意味をなさない。明らかに楽しんでいる様子でリボーンは綱吉との間を詰めると、あろうことか綱吉がしまいこんだ息子を下着の上から撫で上げたのである。
「あーあ可哀想にな、ツナの息子さんが萎えちまった。」
ふにふにと揉むように触られるとかなりまずい。慌てて身を捩りリボーンの攻撃から逃れ、猫の子のようにフーフーと威嚇する。
「ばっ!変なこと言うなって!つか触るなよ!」
「チッ。手伝ってやろうかと思ったのに。」
「怖いこと言うなよ。死ぬ気で遠慮させていただきます。」
リボーンが言うと冗談に聞こえない。綱吉が青ざめながら拒否していると、更に恐ろしい言葉をリボーンは発したのである。
「まあ今は冗談ってことにしといてやる。俺は下に行くからさっさと処理してそれ片づけとけよ。もうすぐママンたちが帰ってくるぞ。」
「マジかよ!ほんと早く出てって!」
リボーンが綱吉の部屋から出ていくと同時に玄関がガチャリと開く音がした。綱吉は人生で初めてというほどに急いでDVDを止めると、パッケージに戻して鞄の奥にしまった。次に窓を大きく開けて換気をし、立ったついでに服も軽く整える。
階下では奈々が買い物袋の中身を冷蔵庫に移しているのだろう、ガサガサという音が聞こえている。
綱吉は足音を忍ばせ階下に向かうと、そっとトイレで先走りを拭った。本当は最後まで抜きたい気持ちも多少あったが、時間切れである。何よりリボーンに現場を目撃された直後に再び抜くなどということは躊躇われた。
しっかりとハンドソープで手を洗い、最後に冷水を顔にかけることで頬の火照りを鎮めると、綱吉は何もなかったかのように洗面所を後にした。
***
『お、ツナ!ちょっと聞きたいんだけどさ、ツナの鞄の中に何のジャケットも付いてないDVD入ってなかったか?』
「えっ…それって。」
『あ、やっぱ間違えて入れてたか。ワリイ、それ先輩に借りたんだけど、帰る時ツナとぶつかって鞄ぶちまけた時に混ざっちまったみてえだわ。悪いけど明日学校に持ってきてくれねえ?』
「は!?学校に?む、無理だよ!」
『そうか?じゃあ後から取りに行くわ。…あ、そうだ。ツナ、それ見るなよ。』
「へっ?」
『ちょっと、な。…まあいいや、すぐ行くからな!じゃーまた後でな!』
「え、ちょ、山本ッ!」
一方的に切られた電話を握りしめ、綱吉はベッドに崩れ落ちた。
「リボーンじゃなかったのかよ!つーか山本なんつーモン見てんだ!」
綱吉の心からの絶叫は、枕に吸い込まれていったのだった。
その後DVDを取りに来た山本と不自然なほどに目を合わせられなかった綱吉は、盛大に怪しまれたとか怪しまれなかったとか。
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