パラフィリア



それは人としての本能。抗い難い誘惑。
「リボーン」
綱吉が震える声で師の名を呼んだ。
「どうしてほしい、なあツナ」
「もっと、欲しい…」
うっとりと瞳を閉じ、欲望を素直に伝える姿は、まさしく煽情的と呼ぶに相応しい。
リボーンは口の端だけで笑うと、綱吉の希望を叶えるためにその首に手をかけた。



***



リボーンと綱吉が一線を越えたのはもう何年も前のことだ。いつかのシモンとの戦いのように野営を行いながら、少しずつ敵地を進んでいた時のことだった。

綱吉にとって、戦闘の合間の僅かな時間、あまり安全とは言えない場所で眠ることは日常であった。しかし、その時は妙に神経が昂り、なかなか寝付けない日が幾日か続いていた。
肉弾戦が主な戦闘スタイルである綱吉にとって、睡眠不足により体力、精神力が回復しきらない状態で戦うことは、集中力の低下、ひいては命の危険を意味する。もちろんこれまで多少万全でなくとも戦ってきたことなど幾度もあるが、だからと言って今回も無事戦闘を終えることができるかどうかなど、神のみぞ知る世界である。何よりボンゴレが益々強くなったのと同じく、敵対ファミリーも戦力を拡大させている。
激戦続きで少しでも体力を回復させねばならぬというのに、一向に訪れない眠気に苛々していた綱吉を見兼ね、リボーンは綱吉を抱いたのである。

嫌がり暴れる綱吉を押さえつけ、無理やり捻じ込んだ。
碌に慣らしてもいないそこは摩擦ばかりが大きく、快感など無いに等しかった。それでも興奮で硬く変化したペニスは萎えるでもなく、その機能をきちんと果たしている。己の先走りと、異物を輩出しようと放出されつつあるのだろう腸液によって、次第に動きはスムーズになっていく。
叫び疲れてぐったりとされるがままになっている綱吉を見れば妙な嗜虐心が湧いた。殺し屋としてターゲットを追っている時のような高揚感。リボーンは自身が酷い興奮状態にあることに気付いた。
首に手をかけ、ぐ、と力を込めれば後ろが痙攣するように締まる。
「や、め…」
生物としての本能か、マフィアとしての条件反射か、綱吉の目に光が灯り、再び抵抗が強くなる。リボーンはその反応に薄く笑った。
手の力を緩めず、腰を思い切り打ちつければ、綱吉の背が大きくしなり、先ほどまで萎えていたそこはしっかりと勃ち上がっていた。
そのまま何度か腰を合わせながら綱吉のペニスを擦ってやると、綱吉は身体を震わせながら達したのだった。
甘さなど一切ない殺伐とした交わり。それでも肉体を重ね、吐精したことによる疲弊は綱吉に一時の睡眠をもたらした。
翌日、久しぶりに睡眠をしっかりととった綱吉は、昨夜の憤りと、尻を除いて万全な体調に複雑な思いを抱えつつも、敵のほとんどを壊滅させたのである。



「…こないだはお前のおかげで助かった。ありがとう。」
全ての残党を片づけ終えボンゴレ本部に戻った綱吉は、非常に嫌そうな顔で、それでもリボーンに礼を告げた。
「それが人に礼を言う態度か」
「……」
綱吉があの夜のことを納得しきれていない事は百も承知だ。だからと言って、不満顔で礼を言われる筋合いもない。リボーンがそれを指摘すると、綱吉は悔しそうに唇を噛んだ。
「不服がありますって顔だな」
「別に、感謝してるよ。あの時寝れてなかったら、俺死んでたかも知れないし」
プイと横を向いて淡々と言う姿に苛立つ。
そもそもリボーンとて男を抱く趣味などないのだ。戦場に女はいないし、ボスを抱けと言われて簡単に何の躊躇いもなく抱けるような者などいない。その守護者たちなら或いはと思いもしたが、何故かその想像に苛立ち却下した。私情がかなり挟まれた消去法で残ったのが己だっただけで、むしろ抱いてやったことに、眠らせてやったことに感謝されこそすれ、怒りを向けられる筋合いはないと思っている。
「なあツナ、お前何様のつもりだ?」
「ッ…!」
敢えて殺気を隠しもせず暗く嗤うと、目の前の教え子はかつてダメツナと呼ばれていた時のように震えながら後ずさった。
刷り込みのように教え込んだ、己への敬意と恐怖。マフィアのボスに就任してもそれは綱吉の無意識を支配している。
そして、先日の行為が思わぬ副作用をもたらしたようだ。
リボーンは一気に綱吉との距離を詰めると、顎を掴んで、怯えきった目を自分に向かせた。
「なあツナ、お前今恐怖で動けないんだろ」
綱吉は何も言わないがカタカタと震える身体が何よりも正直に彼の心情を物語っている。ボスになったというのに情けない、と思うよりそこまで綱吉を支配していることによる喜びの方が勝った。
「気付いてるか、お前のココ、ガチガチだぞ」
ぐりぐりと強めに太腿で刺激してやる。
「うあ!」
突然の痛みに声を上げた綱吉は、自身の身体の変化に目を見開いている。目の焦点が合っていない。
「気付いてなかったんだな。ツナ、お前は俺の殺気に当てられて興奮してるんだ。相当のヘンタイ、だな」
わざとゆっくりと、耳元に息を吹き込みながら囁いてやる。綱吉の身体がぶるりと震えた。



ぐち、と繋がった個所から粘ついた音がする。
本来何かを受け入れるようにはできていないそこは、当然二度目も酷く抵抗した。
最もリボーンも傷つけないよう広げてやるとか、馴染むのを待つだとか、そんな配慮は一切行わなかったのだから、その抵抗に文句を言いはしない。
綱吉は浅く呼吸を繰り返しながら、机にしがみついて尻を突き出している。耐えるようにギュッと閉じられた瞼が己をを拒絶しているように感じられ、リボーンはむき出しの尻を容赦なく平手打ちした。
「ひ!」
突然の痛みに開かれた目は、驚きと恐怖に歪んでいる。
二度、三度と連続して打つと、それに連動するかのように内が締まった。
「や、め…!」
「叩かれるのが気持ちいいのか?さっきよりもギチギチ喰いついてきてるぞ、ツナ」
「ち、がう」
「何が違うんだ、お前のココだってびしょびしょじゃねえか」
言い訳のしようがないほどに張り詰め、先走りを零すペニスを強く握りしめると、綱吉はうわ言のように違う違うと繰り返しながらも、背中をふるりと震わせた。鈴口に爪を立てると肌が粟立ち、綱吉がその行為に快楽を感じているのが傍目にもわかる。
「お前は痛いのが気持ちいいんだろ」
ペニスを握る手はそのままに、首に片手をかけ、いつでもお前を殺せるんだと甘く耳元で囁けば綱吉のペニスはびくびくと震えた。
「俺の殺気で興奮して、痛みが快楽を呼び、死の恐怖で上り詰めるんだ」
「ひっ…うぁああああ!!!!」
その言葉を肯定するように、首にかけた手に力を入れると、あっけないほど簡単にその精を吐きだしたのである。同時に起きた腸内の収縮により、リボーンは綱吉の中に射精した。



***



リボーンはくたりと力の抜けた綱吉を抱きしめてやりながら考える。
何故自分たちはこんな関係になってしまったのだろう。

一度目は仕方なく、ただ疲れさせて眠らせるためだったはずだ。
二度目は苛ついて。
何故自分は二度目を求めたのだろうと考えてみても答えは出ない。ただ、綱吉とのセックスの相性は思いの外良く。大抵の事は大事に至らない綱吉の頑丈さと、痛みを望む被虐心は、リボーンの嗜虐心を酷く刺激した。綱吉もしばらくは否定していたが、そのうち己の性癖を認め、リボーンとの関係を断ち切ることはなかった。それで充分だった。
縛り上げて殴り、その痛みに顔を歪めながら絶頂を迎える。その綱吉に満足しリボーンも満たされるのだ。


けれどいつからだろう。リボーンは決して不快ではないが、妙な違和感を抱くようになった。
この頃、綱吉の泣き顔が見たいからではなく、綱吉を泣かせるために動いているような気持ちになるのだ。
綱吉が望む望まないに関わらず、痛みを与え、拳銃を突きつけ死の恐怖で支配し、無理やり絶頂を引き出していたはずだ。それが、痛みを与えるのも、拳銃を突きつけるのも、全て己の欲ではなく、綱吉の欲を満たすために思えてならない。何より綱吉のために動いていると意識しても、それを何とも思わない自分が一番不思議だった。

何故自分は今、綱吉を抱きしめているのだろう。腕の中で幸せそうにまどろむ教え子が癪で、それでもリボーンはその身体を離そうとはしなかった。



***



殺伐目指したらただの暴力えろになった
暴力反対、です