フラグ消滅



「夏野ってさ、典型的なもやしっ子だよなぁ」

ひたすら画面に向かってゲームをしていたはずの徹が、突然声をかけた。
見るともなしに雑誌をめくっていた夏野は、唐突な声に眉を顰め画面を見た。そこには『BAD END』の文字と共に悲しげなメロディーが流れている。どうやら攻略に失敗し、集中力が切れたのだろう。
そして徹といえば、ゲームのパッケージに描かれたヒロインと夏野を見比べてニヤニヤ笑っている。その様子にムッとした夏野は、少しだけ不機嫌な声と視線で徹に抗議の意を示した。
「開口一番なんだ。喧嘩売ってるのか?てゆかギャルゲーやってるやつにもやしとか言われる筋合いはねぇぞ?」
部屋の隅に積まれたゲームの山を指しながら言ったが、徹は全く意に介していないようで、どこ吹く風だ。
「えーだって腕とか腰とかビックリするくらい細いし、色白いし…パンク一人じゃ直せないし?」
「都会じゃパンクは自転車屋に持っていくんだよ」
「…線の細さについては何も言わないのか」
「徹ちゃんと比べたらそりゃな。否定はできねえもん」
悔しそうに唇を尖らせる夏野に、徹は小さく笑った。


「で?わざわざ俺の機嫌を悪くした理由は?」
答えによっては容赦はしないぞと言外に含ませて尋ねたが、徹は恐らく言外の部分には気付いていないのだろう、ホケホケと笑いながらとんでもない言葉を口にした。

「ん?あー…今やってたゲームでな、男に告られたんよ。んでBAD ENDだったんだけど、告白してきた男がもやしっ子設定だったから夏野と似てるよなーって思って」


「なっ!!!!!!!」


徹の言葉に夏野は驚いて立ち上がり、顔を真っ赤にして徹を睨んだ。 「どした?やけにでかい声出して………」
夏野のただならぬ様子に気付いているのかいないのか、徹はいつもの調子で尋ねる。それが夏野に油を注ぐ結果となってしまった。
「ふざけんな!!!!!何で俺とゲームのキャラを一緒にするんだ!!!!」
バシンといい音を立て徹を一発殴ると、夏野はノシノシと音がしそうなほどの勢いで部屋を出て行ってしまった。


「なんだったんだ…?」
残された徹はポカンとその背中を見送るしかない。
「…俺なんか怒らせるようなこと言ったっけ?………腹減ってたのかな?」






「徹ちゃんのばかやろ…!」
勝手知ったる武藤家のトイレに立て篭もった夏野は、真っ赤な顔を持て余していた。
「無神経すぎるだろ…」
先ほどの徹の言葉を思い返して一人ごちる。そして大きな溜息を一つ。
「ちくしょー好きだって更に言いにくくなったじゃねぇか……」
誰にも聞かれることなく小さな呟きは霧散した。



***



徹ちゃんがやってるゲームはギャルゲー疑惑を友人から聞いたのでつい←
舞台が199X年ということなので、シスプリやらプリンセスメーカーやら同級生シリーズやらあの辺かなと予想

徹はボケボケ天然ちゃんだといいなぁ。。。