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迷走の果てに
今日言わなければいけないなんてそんな決まりはどこにもない。
けれど、今の勢いに任せてしまわなければ、このタイミングを逃してしまえば、きっと自分は墓の中までこの気持ちを持っていくだろう。それだけは、どうしても嫌だった。
だから。
エドワードは全力疾走で司令部を目指す。後ろからにいさーんと可愛い可愛い弟の声が聞こえるが。
許せ弟よ、兄ちゃんは今どうしても成し遂げなきゃいけないことがあって、文字通り立ち止まってる場合じゃないんだ。
エドワードは心の中でアルフォンスに謝罪する。けれど、その速度は緩めないままで。
エドワードには、彼が寝る前に抱いていた甘い気持ちなど微塵も残っていない。あんな女々しい気持ちは寝たら綺麗さっぱり消えてしまった。
代わりに、何故か抱いたのは悔しい気持ち。
曰く、
(何で俺がアイツを好きで悩まなきゃいけないんだよ!!)
そう思えば、直後から悔しさが溢れてきて。
自分だけこんなに悔しい想いをするのは理不尽だから、相手にも同じ気持ちにさせてやりたい。
と、どこか間違った、けれど恋をした者なら誰でも抱く『相手も同じ気持ちを』という結論に達していた。
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ノックはいつもの如く省略し、先ほどまでの勢いのまま飛び込んだ。
机の向こうには少しだけ驚いたような大佐の顔。そのままつかつかとロイの机に近づく。そして、正面ではなく横に回りこみ。
幾分か戸惑った様子のロイが、「鋼の」といつもの声が呼びかけてくる前に、エドワードはギッと相手を睨みつけ、そして告げた。
「好きなんだけど。」
思ったよりあっさりと口をついて出た言葉は、目の前の男にどんな効果を与えているのだろうか。
出来ればまっすぐに相手を見て反応を窺いたいのだけれど、如何せん自分の方に余裕が無い。悔し紛れに手を握り締めて下を向くことで、この場から逃げ出したい気持ちを抑える。
俯いたことで自分に見えるのは自分と彼の足元だけ。流石の天才錬金術師も、これだけの情報量では答えなんてわからない。
ひたすらに俯いて相手の出方を待つも、一向に目の前に居るはずの男は何も言ってこない。このタラシのことだから大げさなまでに驚くか、いつものようにからかってくると思っていたのに。
(何で黙ってるんだよ…!)
エドワードはこの沈黙に耐え切れなくなったのか、意を決して顔を上げた。
「…。」
けれど、その勢いはそのまま止まり。目の前の男の顔を凝視したまま固まってしまった。
なぜなら
「…い、さ?」
思わず声をかけずにはいられないくらい(もっと言うなら思わず声を潜めてしまうくらい)に、目の前の男、ロイ・マスタングは顔を真っ赤に染め上げ動きを停止させていたのだから。
予想外のロイの様子にエドワードの方が面食らってしまった。
「ちょ、おい…大佐??」
おろおろとロイを下から覗き込んで。
「…きみは…。」
その上目遣いにロイが更にあてられたことにも気付かず、不安げに瞳を揺らしている。
「…やっぱ俺じゃ、だめ…だよな。」
その突飛した思考は天才故か。エドワードはその大きな琥珀色の瞳に心なしか涙を溜め、悲しげに顔を曇らす。
けれど、そんな悲しみは杞憂に過ぎないわけで。ロイは慌ててエドワードの言葉を否定すする。
「なっ!俺がきみを拒否するなんて有り得ない!!」
ロイは思わず普段の口調も忘れ、声を荒げていた。それと同時に停止していたロイの思考が目まぐるしく働き出す。
「へっ?」
予想外のロイの言葉に今度はエドワードが固まる番だ。
『おれがきみをきょひするなんてありえない』
エドワードの中で先ほどのロイの言葉がエコーのように響く。えーと、それはつまり…?
不安に揺れた瞳のままロイを見上げれば、その瞳とばっちり目が合った。
「私も…きみが好きだ。…いや、愛してる。もしきみも同じ気持ちなら…付き合ってくれないか?」
幾分か顔を赤らめ、けれどしっかりとした声でロイは言った。エドワードはというと、ただ呆然とロイを見つめていて。
「鋼の…エドワード、きみの答えを聞かせてくれないか?」
ロイは突っ立ったままのエドワードを軽く抱き寄せ、耳元で囁く。どんな女性でも一発で落としてきたとびっきりの甘い声で。
そんな大人の色気に耐性の無いエドワードは、顔を真っ赤にしてただコクコクと頷くことしか出来ない。
そしてそのままロイが口付けてきても、されるがままになっていた。(もちろんロイとしては理性を最大限に発揮し、ごく軽めのフレンチキスで我慢した)
けれど、唇が感知する感覚に我を取り戻したエドワードは、そのまま照れ隠しか本当に拒否かわからないような右ストレートを繰り出し、ロイの腕から逃れて。
「大人のキスは次回のお楽しみだな…。」
慌ててロイの執務室から飛び出した愛しい子どもの背を、腹を押さえつつ見送りながら、ロイは一人ほくそ笑んだ。
こうして東方司令部に色んな意味で最強カップルが成立した。
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ヘタレ増田は大人の狡さで子どもを手に入れた
ロイは兄さんの尻に敷かれてたらいいよ。(歪んだ愛情(こんな事言ってますが増田大好きです
てゆか増田には、手を出そうとするたびにアルとか中尉とかに邪魔されて、一人悶々とした夜を過ごすのがお似合いだ。(何度も言いますが増田(ry
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