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My Sweet Baby
仕事が終わって自宅に帰れば、優しい妻の笑顔と温かい料理が出迎えてくれる。
男のロマンとも言えるそんなシチュエーション。
けれど、独り身を待っているのは優しい妻でもなければ温かい食事でもない。ただの冷えた部屋と、何も無い冷蔵庫。
寒い夜は独り身を呪いたくなる。などと思いながらロイは自宅のドアに鍵を差込み、そして違和感に気付いた。
「…開いてる。」
この扉は暗号の掛かった錬金術と鍵の両方を用いてやっと開くことができる。その扉を開けることが出来るのは、同じ鍵を持ち、且つ暗号を知っている人間だけ。そういえば、今は彼らはこちらに帰ってきている。今日は遅くなるから弟と一緒に、と告げたはずだが…。
いじらしいエドワードの行動にロイの顔が知らずほころんだ。
「ただいま。」
ロイはドアを開きながら声をかける。けれど玄関は暗いままだし、冷たい。流石に彼にそこまで求めるのは無理な話かと、いささかの落胆を覚えつつ扉をくぐった。
「…?」
そこで気付いた、家を出る時には絶対にしていなかった異臭。
ロイはその原因を探るべく自宅に足を踏み入れた。
「…一体何をやっているんだね、きみは。」
心底げっそりした声でロイは尋ねた。
「え?何って…料理?」
そこで疑問形になるようなものを作らないでくれないか。しかも人の家で。
おかげで酔いもいっぺんに覚めたじゃないか。
「どこをどうしたらポタージュスープがどろどろの黒い液体に変わるのか説明してみたまえ。」
ラグの敷かれた床の上。正座で説教。
しゅんと項垂れたエドワードはしかしどこか楽しそうで。
「えへへ〜ロイのお説教だぁ〜。」
ヘラヘラと笑いながら心底嬉しそうにエドワードは怒られる。…これでは説教の意味が無いではないか。
「一体どうしたんだエド。きみらしくもな…」
呆れて溜息を洩らしたロイの言葉は不自然に途切れ。その視線の先には空き缶が数本。
ギロリとエドワードを睨むと、彼はわざとらしく目を逸らし。
「…飲んだな…?」
地を這うような声でロイは静かに尋ねた。
「迂闊だった。そうだきみがアルコールを摂取するとどうなるか以前身に染みてよくわかったはずだったのに…。」
額に手を当て、深く息を吐き出す。
エドワードは飲酒をすると、何故か創作料理を作り始める癖がある。しかも、お世辞にも美味とは言えない、どちらかと言うとゲテモノ料理を作るのだ。そのおかげで、以前ロイは思い出すのもおぞましい目にあった。
「というか、酒は飲んではいけないとあれほど言ったのに!!!」
「だって…寂しかったんだもん。」
消え入りそうな声にハッとエドワードを見れば、先ほどまでの満面の笑みはどこへやら。その大きな瞳いっぱいに涙を浮かべ、フルフルと肩を震わせていた。
「エド…。」
「ロイは!ロイは…モテるから…今日のパーティだって仕事って言ってたけど、俺不安で…。」
ウルウルと涙の溜まった瞳で見上げられ、ロイの理性がぐらりと動く。
ロイも先ほどのパーティでいくらかアルコールを摂取していた。そのため理性が抑えられなくなるのも時間の問題であって。
「俺っ俺っ…不安だったんだ!だから…」
しゃくりあげながらエドワードが語っていくのも、今のロイには誘っているとしか思えなく。
「そうか…寂しい想いをさせてしまったんだな…すまない。」
そう告げるや否や、エドワードを抱き寄せ、彼の目尻に唇を落とした。
***************
ベッドの上に座り、クスクスと笑い合いながら啄ばむようなキスを繰り返す。互いの手は不埒な動きをしながら相手の服を脱がしあって。
アルコールの為か、エドワードの身体はひどく熱く。その熱にロイの興奮も益々高まる。
先ほどまでの遊びのようなキスから、深い官能的な口付けへ。自然と二人は抱き合う形でベッドに倒れこんだ。
舌を絡ませ、唇を貪る。舌先で歯列を辿れば、背筋を伝う快感。
「ッ…んっ…」
角度を変えるたびに零れるのは、吐息とも嬌声とも取れるような甘い甘い。
唇の端から流れ落ちる唾液が、エドワードの首筋を伝った。
「俺より先にエドを味わうのは許せないな…。」
エドワードの首に光る一筋の水跡に気付いたロイは、一旦唇を離すと、そのままエドワードの口の端へ唇を落とし。そこから顎、首筋へと唇を舌を滑らせる。
「あっ!んッッ!」
首筋を伝う舌の不埒な動きにエドワードはビクビクと跳ね、けれど、もどかしい快感は彼を追い詰めていくだけで。
「ろ、い…ッおねが、い…」
堪らずエドワードはロイを急かす。しかしロイは笑って肩の機械鎧の繋ぎ目に舌を這わせるだけで。
「きみは快感に弱すぎるよ。」
くすくす笑いながら、空いた手で腹部をまさぐって。その刺激にエドワードは殆ど無意識に身体をくねらせ、全身でロイを誘う。その瞳は快楽に濡れ、妖しく輝いていた。
裸で抱き合い、深く深く口付ける。何度も角度を変え、互いに舌を絡ませ。
胸をまさぐる手はエドワードに確かな快感を植えつける。親指と人差し指で捏ねるように突起を弄れば、彼の口から高い悲鳴が漏れて。
ロイが舌先でそこをノックしてやれば、背筋を震わせ快感に耐える。舌と唇で何度も何度も舐め、吸い上げる。ぷくりと主張するそこは幾つかあるエドワードの性感帯の一つ。
空いた手で下肢に手を伸ばせば、そこはフルフルと震えて吐精に耐えているのがよくわかる。きゅっと根元を握りこんで、乳首への攻撃を強くすれば、泣きそうな悲鳴が上がった。
「やッァあ!!違うッ!!」
舌足らずな悲鳴にロイは満足げに笑い、身体をずらしてエドワード自身を咥えこんだ。
「んっ…ァッ」
甘い、それだけでイケそうなエドワードの嬌声をもっと聞きたくて、亀頭を舌の裏側で刺激する。赤ん坊が母親のおっぱいを吸うように、ちゅっちゅっと先端を吸えば、エドワードの嬌声が一層高くなり、彼の限界が近いことを悟る。
裏筋の、カリの付け根から少し下を固くした舌先で舐めれば、ひゅっと息を吸い込む音が聞こえ、そのままエドワードはロイの口の中に若い精を吐き出した。
「ッー…」
ロイは、射精の余韻に浸り肩で息をするエドワードを軽く抱きしめ、ベッドサイドのローションを手に取った。
冷たいそれをグッタリしたエドワードの後ろに垂らす。途端、ビクリと彼の身体が震えた。
「んっ冷たッ」
「すぐに熱くなるよ…」
恨めしそうなエドワードの視線に、にっこりと微笑み返し、ロイは人差し指でそこをやわやわとマッサージし始める。エドワードも身体の力を抜き、ロイに協力して。
人差し指をくぷりと挿入すると、待ち望んでいた身体は期待に震えた。
くちゅくちゅと小さな音を立てて指を動かす。
「ふっ…んっッ」
指が与える刺激に、吐精のため萎えていたエドワード自身は硬さを取り戻し。早くロイを受け入れたいと身体全体で訴える。
ちゅぷっと音を立てて指を引き抜くと、咥えこんでいたそこは名残惜しそうにヒクリと動いた。
エドワードの痴態に散々煽られ続けたロイ自身は既に硬く猛っており。けれど、それだけでは挿入できなくて。
「エド…」
優しく呼びかけるとエドワードはゆっくり起き上がり、ロイの股間に顔を埋める。
舌全体を使ったフェラチオ。射精を目的としないそれは、けれど二人を急かすのには十分だった。
エドワードを壁に縋らせ、ロイは後ろから挿入した。熱くて、柔らかいそこは歓喜に震えながらロイを受け入れる。
「んっロイッ!ろいぃッ」
はぁはぁと息を荒くして、それでもエドワードはロイの名前を呼び続ける。ぎゅっと眉間に皺を寄せ、壮絶な艶を放つ彼が愛おしい。
もっと自分を感じて欲しくて、ロイはエドワードを後ろから抱きしめ、自分の膝の上に座らせる。
自重で一層深くなった繋がりに、エドワードは一際高く啼いた。
繋がったままエドワードの身体を自分の方に向かせると、二人はうっとりと抱き合い、何度も何度も、深く深く口付ける。
ゆっくりと、壊れ物を扱うかのようにロイはエドワードをベッドに横たえさせる。
エドワードの膝裏をしっかりと固定するように持ち、何度も何度もそこを擦りあげる。深く挿入すれば、絡みつく腸壁がロイ自身を包みこみ。ギリギリまで引き抜けば、焦ったようにエドワードが縋りつく。
「エド…愛してる。」
もう何度言ったかもわからない、けれど決して褪せることの無い言葉を口にする。
「んっ俺もッ…あい、してるッ」
涙で潤んだ瞳でエドワードがロイを見つめて。
「だからッ一緒に…!」
殆ど叫ぶような言葉に、ロイはピストン運動を速め。エドワードの前立腺を擦りあげる。
「ッ、も、むりッ!!」
目の前がチカチカするような快感にエドワードはロイに縋りついて。ロイもその身体に腕をまわす。
しっかりと抱き合い、二人は同時に達した。
***************
事後の気だるい体をベッドに横たえ、ロイは眠るエドワードの頭を何度も撫でる。
「ロイ…?」
薄っすらと目を開け、まだ眠気の残る声色でエドワードがロイを呼んだ。
「まだ早い…もう少し眠りなさい。」
微笑みながら告げると、エドワードは素直にそのまま瞳を閉じ、再び夢の住人へ。
その安心しきった無防備な頬に軽いキスを落とすと、しっかりと抱きしめ、ロイも瞳を閉じた。
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