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最初はお互い知らないまま。偶然の出会い。
二度目は偽りの姿で、けれど強くお互いを意識した瞬間だった。
それ以降何度も何度も対峙し、時には協力し、そうして付かず離れず、微妙な距離を保ってきた。
けれど
もう
我慢できない!
「あの、すいません!」
「んあ?」
「俺と…友達になってください!」
「はあ?!」
BFF 〜 Best Friends Forever 〜 上
こないだ道を歩いてたら、変な男が飛び出してきた。顔は俺に似ている。けど、俺はあんなにへらへらしてないし、頭もぼさぼさじゃないから、多分、似てるだけ。つか気のせい。
そいつは黒羽快斗と名乗り、そして、突然意味のわからない事を言い出した。曰く、友達になってくれ、と。
これでも探偵やってるし今まで色んなタイプの人間に出会ってきたが、出会いがしらにこんな事を言われたのは正直言って初めてだ。
目を白黒させている間に、黒羽は勝手に自分のプロフィールをべらべら喋り始めた。いや、俺、聞いてねえし。
「つか何だよオメー」
「あ、俺?工藤と友達になりたい江古田高校2年B 組の天才マジシャン」
そう言ってポンと花を差し出してきた。突然のマジックに、先の言葉を思い返す。天才かどうかは知らないが、マジックの腕前が確かなことはよくわかった。
何か変なノリのヤツだと思うが、悪いやつではなさそうだ。悪意は特に感じないし、ただ、かなり馴れ馴れしいだけで。
つかいつの間に敬語からタメ語に変わってるんだ。
「友達って…変なヤツ」
「いーだろ。工藤の広そうな交友関係に少し隙間空けてくれよ」
「バーロ。突然出てきた怪しい男に空ける余地なんざねえよ」
「ちぇー快斗君しょんぼり」
「ケッ」
口ではあしらっているが、俺はなんとなくコイツともう少し親しくなりたいと思ってしまった。ポンポンと進む会話に、違和感を抱かせないマジックの腕前。これだけでも十分気になる余地があるというのに、なんとなく知った気配を纏っているような気がしてしょうがない。
だが上手く策略に乗せられたのが気に食わない。俺は少し考えるそぶりを見せ、そして思いついた。
「いいぜ、黒羽。オメーの言うとおり友達になってやる。つか事によっちゃあ親友でもいいぜ?」
「マジで!?」
「…ただし、俺のだす幾つかの課題をクリアできたらだ」
***
「俺の友達になるんだったら、まず必須なのはホームズの知識だ」
そう言って積み上げたホームズに関する書籍の山に、黒羽はポカンと口をあけている。
いやそもそも俺の家の門を見た瞬間から口を開けっ放していたか。
「見たところオメーにホームズの知識はなさそうだから…そうだな、今から24時間以内に原作を含むここの本全部読め。24時間後にホームズの知識を問うテストしてやるよ。あ、ちなみに合格点は9割な。つっても問題はまだ作ってねえし、モノによっちゃ8割5分まで合格点にするかも知れねえけど。まあ頑張れ」
ひらひらと手を振って踵を返した瞬間、引きつった黒羽の顔が見えた気がした。
さて、適当に24時間と言ってみはしたが、速読でもやってない限りあの量は24時間では読めはしない。よしんば読めたとして、内容を細部まで覚えておくのは至難の業だ。
さすがに一応客人を飢えさせるのは忍びないと、軽食を持っていったついでに様子を窺えば、絶望的な表情で、それでも必死に活字を追っている姿があった。
その姿にはある意味鬼気迫るものを感じる。これはテスト作成も気合を入れなければならないだろう。
その結果、出来上がったものが昔懐かしのホームズカルトテスト並みのレベルになったとしても、だ。
約束の24時間後、ヘロヘロになった黒羽が書斎から出てきた。
恐らくは貫徹したのだろう。薄っすらと隈が目の下を覆っている。オトコマエが台無しだ。
「よお、調子はどうだ?」
「一日ぶりーまあ見てろ」
くたびれた容姿とは裏腹に、自信たっぷりの言葉にこちらも期待が高まる。
「…この問題が解けたら俺はオメーを知人くらいには認識してやるぜ?」
「知人、友人、親友、くらいでレベルアップするのか?まあ俺は全部攻略してやるけどな!」
「おーその意気だ。つーことで、コレ。制限時間は一時間。一問1点の100点満点な。カンニング不可。まあ頑張れ」
そう言って渡した紙の束に、黒羽の頬が引きつった。
一時間後、携帯のアラームがテストの終了を告げた。
「オメーこの問題鬼畜すぎ。俺、初心者だぜ?」
「ケッ。俺とトモダチになりてえんだろ?これぐれー解けねえと話に付いてこれねえって」
言いながら採点をしていく。かなりマニアックな問題を作ってしまった自覚はあるため、少しは甘めにしようと思っていたのだが。
「…オメーすげーよ」
「だろ?」
「ありえねーなんで初心者が9割5分取れてんだ。一応この問題、8割合格のつもりで作ってンだけど」
「ま、俺様が本気出したらこんなもんだろ。つっても俺、満点目指してたんだけどな。やっぱ一夜漬けだとンなもんか…」
テスト中は俺が一応監督らしきことをしていたため、カンニングはしていないと思われる。それでこの結果だ。素直に賞賛に値する。
「第一テストは文句なしの合格だ。オメーを知人くらいには認めてやるよ、黒羽」
***
「さて。次のテストは俺の大事な友人たちも審査に加わる」
「は?」
「まあつまり、俺の友人に認められたらオメーを友人として歓迎するぜ?ってことだ」
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